こんにちは、よーへいです。
先日から実際にぼくが行なっている麹づくりの様子をお届けしています。ショップ「米と糀」で販売している糀も全く同じ工程を経て作られています。
第1回は麹づくりの土台とも言える『蒸し米』作りのお話をしました。これは畑に置き換えてみると、土作りの段階。
第2回は種をまき、芽を育てていく工程。(【麹づくり初日】引込み〜切返しまで。時間をかけて芽吹かせる。)
今回は芽を出したコウジカビを育てていきます。特にここからの温度管理によって麹の性質が変わってきます。モコモコしたタイプの麹なのか、サラサラとした麹なのか。
僕は後者のタイプの麹をつくっているので、そちらを中心にして書いていきますね。
麹蓋に小分けにする「盛り」
前回の記事では「手入れ」までを解説してきました。手入れを行ってから約12時間。特に9時間を経過したあたりから温度上昇が強くなってきます。
これは順調にコウジカビが成長している証です。中心部ではコウジカビが繁殖してお米とお米がくっつくくらいになってきています。
この段階で行う「盛り」。何をするのか?というと、麹蓋という杉の木でつくったケースに移し替えます。
[aside type=”normal”]ここでは麹蓋に移し換えると言っていますが、製法は様々あるんですよね。麹蓋、麹箱、機械製麹といったぐあい。[/aside]
よく見るとコウジカビが破精(はぜ)込み始めているのがわかると思います。麹の破精(はぜ)込みというのはコウジカビの繁殖の様子をさす言葉です。
突き破精、総破精、ぬり破精、バカ破精などの用語がありますが、ここでの詳細は省きますね。
麹蓋を使用する利点
少量で小分けにすることで細やかに温度・湿度を調整することができます。ですが、酒蔵などでは大量に仕込みをするので、管理する麹蓋の数が増えてしまうんですね。
積み重なった麹蓋は位置によって温度や湿度が異なるために組み換え作業が行われます。その作業量って凄まじいものがありますよね…スゴい!
なので、吟醸酒や大吟醸酒に使用する麹だけは麹蓋法で製麹するというという酒蔵さんもあります。
ちなみに僕が大好きな愛知県の澤田酒造さんは全量を麹蓋でつくられています。これめっちゃ大変で手のかかるお酒造りなんですよね。
仲仕事・仕舞い仕事
「盛り」から約5時間。ここまでに増えてきたコウジカビが育ち始めます。麹の温度もグングン上昇を始める期間になります。
目標地点は約36℃なんですが、思っている以上に品温が急上昇してくる工程でもあります。温度が上がりすぎないように注意。
実は僕自身もこの段階の温度調整が苦労しております。なかなか想像通りにいかないところ。
約5時間が経過し温度が約36℃の頃に「仲仕事」という工程が入ります。引込みから10時間後に行った「手入れ」と同じような意味合いの作業になります。
「盛り」の状態でくっつき始めたお米同士をバラします。バラしたと同時に麹蓋の中に均一な厚みに広げます。熱と湿気を逃し、空気を送り込むための工程です。
コウジカビの増殖には酸素が必要なので、広げることでコウジカビが触れられる酸素を増やすんですね。また、表面積が増えることで、放熱もしやすくなるので温度が過剰に上昇するのを防いでもくれます。
仲仕事が終わり、5〜7時間。品温が40℃を越えてくる予定です。
ここでもう一度「仕舞い仕事」と呼ばれる手入れを行います。意味合いは仲仕事と同じ。熱と湿気を逃し、空気を送り込みます。さらに発酵(コウジカビの増殖)を進め、温度が上昇するのを促します。
麹を作るときの最高温度は43℃。それ以上になってしまうと、そこで麹の発酵が終わってしまうので温度が上がりすぎても良い麹にならないんですよね。
麹を観察し、温度を確かめなるべく均一にコウジカビを育てていかなければなりません。
上の写真は「仕舞い仕事」が終わったところ。まだ研究中なのですが、模様が描かれていますよね?この時は渦巻きにしました。
これは最終段階で温度の上がりすぎを防ぐため。平らにしているよりも表面積が増やしながら、厚みを均一にして熱を逃がすためです。
こうして仕舞い仕事が終わり、品温40〜43℃をキープさせながら約10時間。出麹を迎え、麹が完成します。
コウジカビの育つ環境を整える
こうして3回に分けて書いてきましたが、だいぶ端折っている部分もあります。また、改めて書いていきますが僕の麹造りのアウトラインはわかっていただけたんじゃないかなと思います。
麹を「つくる」と言葉では言ったり書くんですが、実際は『育てる』が正しい。
さらに言えば育つ環境を整え続ける作業なんですよね。そう言う意味で本当に農業に似ていると言うか…作物を育てるのか?微生物を育てるか?だけの違いのようにも感じます。
そして、その環境の整え方の違いで麹の性質にも変化が出てくるんですね。甘みを強く出すのか、旨みを出すようにするのか?
また、その話は別の機会に書いていきますね。と言うことで、ここまで。
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